長期的視点で育児支援をしていく

松本絢さん (整体師)

今回のセミナーでの発見をはっきり言葉にするのは難しいのですが、とても大きかったように思います。あそび発達として独立した知識というより、あそび発達という概念自体が育児セラピストの知識の集大成であるような印象を受けました。

ですが前回の乳幼児のあそび発達の講義の時、「知識としては素晴らしいけれども、この時期の育児ママは現実的にはやる余裕がない人が多いのでは?」という疑問がずっと残っていました。この時期のママ達は、とにかく体力も気力も時間もギリギリなので、そこに新たにやらなきゃいけないことを追加するのは無理があるような気がしたのです。しかし、前回今回とセミナーを受けてみて、ようやく「アタッチメントあそび発達」というものの全体像が見えてきたように思います。やるべきことを追加するというより、親の側も子供と同じように真っ白に戻って子供と向き合うことを楽しみましょう、という意味なのだと感じました。「こう教えなければいけない」という足し算ではなく「無目的になる」という引き算の発想で楽に教育できるんですよ、ということなのだと解釈しています。

難しく考えずに子供と向き合っていく

私は育児中のママ達を施術する中で、いつも意識することがあります。それは、まず何よりもママたちの余裕を作ることが最優先だということです。施術を受け、体調面、美容面に余裕ができたママ達は、特に何も指導しなくても自然と愛情のある育児になっていくようです。

逆にそこを無視して育児について何らかの指導をした場合、「必要なのは何となく分かるけど目の前のことで精いっぱいだから何も聞きたくない」という心の限界を訴えるかのような拒絶を受けることがあります。なので伝えるべきは、難しく考えずに子供と向き合っていればいいんですよ、ということなのではないかと思います。

セミナーの中で重要な知識として、バーチャルの世界を体感できるスマホやタブレット、そしてビデオなどの過剰活用の危険性がありました。これはなるほどその通りだと感じています。しかし反面で、これを子供に与えると子供がそちらに夢中になることが多く、とても育児が楽になるという側面があります。危険な落とし穴ではあるのですが、この「育児が楽になる」という側面は決して無視できないものですので、それを乗り越えるだけの良いあそびの意義、そして面倒の少なさを伝えていく必要があると思います。

育児支援の一つの完成形

実践としてやっていくことは、親子教室がベストだと思います。全国大会の時の実演で本当にそれを感じました。私は独身ということもあり、つい知識として伝えることを考えてしまうのですが、知識はいわゆる「お勉強」であり、余裕のないママ達にとってあまり有難いものではないと今は思います。むしろ知識は最低限で実習として体感してもらい、その実感からママ達自身に考えてもらうことの方がよっぽど大切なんだと感じました。

ただこれは、子育て経験のない私には正直伝えきることが難しい部分かも知れません。教室開催にあたっては、子育て経験のある方と協力するべきではないかと感じています。

ずっと感じていたことではあるのですが、育児経験を活かしたいという方はその活動をボランティアとして捉えている方が多いように思います。そういった情熱はあるけど稼ぐのは苦手、という方々に雇用を提供できるような環境作りをすることが、今後の私の課題ではないかと考えています。そして親子教室なども営利を考えながら組織的に運営できるようになることが、育児支援の一つの完成形ではないかと思います。

私の希望は、パパも積極的に育児セミナーに参加するような環境を作っていくことです。しかし、これはいきなりパパだけに募集をかけてもできることではないと実感しています。やはり入り口としてのママの存在、そして家族ぐるみで育児をしたいという思いが必要なのだと感じました。そのためには私の力はごく微力で、協力してくれる経験者の力が絶対必要だと感じています。長期的視点で育児支援をしていくためには、まずその組織作りをしていくこと、それを今後の目標にしたいと考えています。

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